第三話  研磨炭(静岡炭)

漆器作りに使う炭は、バーベキューに使う燃料炭

とは原木が違います。朴(ほお)や椿やニホンアブ

ラギリ等を使った研磨炭で、それぞれ朴炭・椿炭・

静岡炭などと言われています。  ( 左の写真は

静岡炭です。)静岡炭 (昔は駿河炭)と言われてい

るように、静岡で多くの炭が焼かれていたようで

すが、現在では原木となるニホンアブラギリが、

伊豆半島で確認できるくらいで静岡炭は静岡で作

られていません。北陸地方の山間部で焼かれて

いるものが流通しているようです。量も質も低下

傾向です。

漆器作りの中で研磨炭は塗面を平らに滑らかに

するためや、蒔絵の金属粉を研ぎだすときに使

われます。研ぐ面の面積や形状に合わせて、そ

れに適応した大きさや形に炭を作って使います。

( 左写真参照 )普通は、木口( 年輪の面 )を研ぎ

面にして水研ぎします炭を研磨に使うのは漆器作

りだけでなく、金属の研磨にも使用されています。

それも私たちの生活に無くてはならないものを作

るために。それは、紙幣・お札です。

大蔵省造幣局で原版の研磨に使われています。

研磨炭は絶対量が減っているために、質の良くな

いものも高値で取引されています。そのため最近

では合成樹脂と砥粒で作った砥石( 人工炭 )も使

われています。研磨能率は天然の良炭には、か

ないませんが人工だけに均質性は優れています

天然と人工のものを上手に使い分けていく必要

があるようです。漆器づくりでは、炭以外に研

磨材として様々な工程でそこに合った荒さのサン

ドペーパーも良く使われていますが、今のように

便利なサンドペーパーがなかったころ昔の職人さ

んは左写真のものを使っていたようです

これは鮫の皮膚(鮫はだ)です。

わさびを摩り下ろす時に使ったことがありません

か。シドニーオリンピックの競泳用水着の表面加

工で話題になったのがこれです。

第二話の箆にしても今回の研磨材にしても、昔の

人は自然の中で物を作り、自然のものと上手に

付き合ってきたことに驚かされます。

現在の私たちの生活やものづくりと自然との距離

の大きさを痛感させられますね。

鳥羽漆芸へのお問い合わせ・ご質問

Copyright (C) 1999-2010 鳥羽漆芸